
こんにちは。
元ITエンジニアで現役介護福祉士のやなぎです。
新人介護士さんに指導をしていると、
・「大丈夫です」
・「分かりました」
・「特にありません」
という返事が返ってくることがあります。
もちろん、本当に理解できていて、安心している場合もあります。
ただ、現場で見ていると、あとから
「実はまだ不安でした」
「聞きたいことがあったけれど、聞けませんでした」
「その場では分かったつもりでした」
ということが見えてくる場面もあります。
指導員側からすると、
「言ってくれればよかったのに」
「大丈夫と言っていたから進めたのに」
「本当はどこが不安だったんだろう」
と感じることもあるかもしれません。
でも、新人さんの側から見ると、
「大丈夫です」と言うしかなかった理由がある場合もあります。
新人の頃の私も、指導員に「大丈夫?」と声をかけられた際に、何となく不安はあるけど、なんて伝えたらいいかわからず「大丈夫です」と言ってしまうことはありました。
この記事では、介護の新人教育で「大丈夫です」が増えやすい理由と、新人さんの本音に近い不安を拾いやすくする振り返りシートの作り方を考えていきます。
新人さんを責めるためではなく、
指導員が一人で悩みを抱え込むためでもなく、
新人さんと指導員のすれ違いを少し減らすための記事です。
新人教育で「大丈夫です」が増えるのは珍しいことではありません
新人教育の中で、新人さんが「大丈夫です」と答えることは珍しくありません。
これは、必ずしも悪いことではありません。
新人さんなりに前向きに受け止めようとしていたり、
その場では本当に分かったつもりだったり、
指導員に心配をかけたくないと思っていたりすることもあります。
ただ、「大丈夫です」という返事だけでは、実際にどこまで理解できているかまでは見えにくいです。
たとえば、
- 手順は分かったけれど、一人で行うのは不安
- 説明は聞いたけれど、次に同じ場面で動けるか分からない
- 何が分からないのか、自分でも言葉にできない
- 聞きたいことはあるけれど、今聞いてよいか迷っている
こうした気持ちが残っていても、返事としては「大丈夫です」になることがあります。
新人さんの「大丈夫です」は、安心のサインであることもあります。
でも、不安をうまく言葉にできないときの返事になっていることもあります。
だからこそ、指導員側は「大丈夫です」という言葉を否定するのではなく、その奥にある小さな不安を拾いやすい形を用意しておくことが大切です。
新人さんが「大丈夫です」と言ってしまう理由
新人さんが「大丈夫です」と言ってしまう背景には、いくつかの気持ちが重なっていることがあります。
たとえば、
- 迷惑をかけたくない
- できない人だと思われたくない
- 何度も聞くのが申し訳ない
- 忙しそうな先輩に声をかけづらい
- 「まだ分からないの?」と思われるのが怖い
- 何が不安なのか、自分でもまだ分からない
- その場を止めたくなくて、とりあえず返事をしてしまう
新人さんは、何も考えていないから「大丈夫です」と言うわけではありません。
むしろ、いろいろ考えすぎているからこそ、
一番角が立たない返事として「大丈夫です」を選んでいることもあります。
特に介護現場では、先輩も忙しく動いています。
ナースコール、食事介助、排泄介助、記録、申し送り、利用者さんの対応。
その中で新人さんは、
「今、聞いていいのかな」
「これを聞いたら手を止めてしまうかな」
「前にも教えてもらったことかもしれない」
と考えてしまうことがあります。
そして、聞くタイミングを逃したまま、
「大丈夫です」と答えてしまう。
これは、新人さんのやる気がないからではありません。
不安を出すための言葉や場面が、まだ用意されていなかっただけかもしれません。
指導員も「本当に大丈夫なのか」が分からず悩んでいる
一方で、指導員側も悩んでいます。
新人さんが「大丈夫です」と言ったとき、
「本当に大丈夫なのかな」
「もう少し聞いた方がいいのかな」
「でも、聞きすぎると負担になるかな」
と迷うことがあります。
指導員も、新人さんの本音を聞きたくないわけではありません。
ただ、現場では自分の業務もあります。
利用者さんの安全も見ながら、新人さんにも説明しなければいけません。
その中で、毎回じっくり時間を取るのは簡単ではありません。
さらに、深く聞こうとすると、
「問い詰めているようにならないかな」
「不安を無理に言わせていないかな」
「本人が大丈夫と言っているなら、信じた方がいいのかな」
と考えることもあります。
指導員側にも、迷いがあります。
だからこの問題は、
「新人さんが本音を言わないから悪い」
「指導員が聞けていないから悪い」
という話ではありません。
新人さんも指導員も、それぞれの立場で考えている。
でも、その間に小さなすれ違いが起きている。
ここを丁寧に見ていく必要があります。


「大丈夫です」が増えると、どんなすれ違いが起きるのか
新人さんの「大丈夫です」と、指導員側の受け取り方にはズレが生まれることがあります。
| 場面 | 新人さんの内側 | 指導員側の受け取り |
|---|---|---|
| 「大丈夫です」と答える | 迷惑をかけたくない | 大丈夫なら次に進めそう |
| 「分かりました」と答える | その場では分かった気がする | 説明は伝わったかもしれない |
| 「特にありません」と書く | 何を書けばよいか分からない | 困りごとは少ないのかもしれない |
| 聞かずに動く | 聞くタイミングを逃した | 自分でできると思ったのかもしれない |
このすれ違いは、どちらかが悪いから起きるものではありません。
新人さんは、迷惑をかけないようにしている。
指導員は、大丈夫という言葉を信じて次へ進めようとしている。
でも、不安が見えないまま進むことで、あとから
「本当はまだ一人では怖かった」
「どこを確認すればよいか分からなかった」
「聞くタイミングが分からなかった」
ということが出てくる場合があります。
だから大切なのは、「大丈夫です」と言わせないことではありません。
「大丈夫です」の後に、もう少し不安が出てきやすい形を用意することです。


不安を話しやすい環境は、新人教育でも大切です
新人教育では、技術や手順を教えることも大切です。
ただ、それと同じくらい、
「分からない」
「もう一度見たい」
「ここが不安です」
と言いやすい状態を作ることも大切です。
不安を言えないまま進むと、新人さんは一人で抱え込みやすくなります。
指導員側も、どこに不安が残っているのか分からないまま、次の段階へ進めることになります。
もちろん、新人さんが最初から何でも話せるわけではありません。
職場に慣れていない。
指導員との関係性もこれから。
自分の不安を言葉にすること自体が難しい。
そう考えると、いきなり「本音を話してください」と求めるのは、少し負担が大きいかもしれません。
だからこそ、最初は本音を引き出そうとするよりも、
不安が少し出てきやすい項目を用意する方が現実的です。
たとえば、
- まだ一人では不安なこと
- もう一度見たい場面
- 聞きにくかったこと
- 次に一緒に確認したいこと
こうした項目なら、「困っていることある?」よりも答えやすくなる場合があります。


「大丈夫です」をなくすのではなく、不安を少し出せる形にする
この記事で目指したいのは、新人さんが何でも本音を話せる状態ではありません。
最初から本音を全部話すのは難しいですよね。
職場の雰囲気、指導員との関係、本人の性格、その日の忙しさによっても変わります。
だから、まず目指したいのは、
不安を少しだけ出せる状態
です。
「困っています」と言うのは難しくても、
「もう一度見たい場面」を書くことならできるかもしれません。
「分かりません」と言うのは怖くても、
「まだ一人では不安なこと」を選ぶことならできるかもしれません。
「本音を話してください」と言われると構えてしまっても、
「聞きにくかったことはありますか」と項目があると、少し書きやすくなる場合があります。
大切なのは、不安を無理に引き出すことではありません。
新人さんが出せる形にする。
指導員が受け取りやすい形にする。
そして、次に一緒に確認する場面へつなげる。
ここまでできると、「大丈夫です」で終わっていた振り返りが、次の指導につながりやすくなります。


指導員ができる具体策
ここからは、指導員が現場で取り入れやすい工夫を紹介します。
1. 「大丈夫?」だけで終わらせない
「大丈夫?」と聞くこと自体は悪くありません。
ただ、それだけだと新人さんは「大丈夫です」と答えて終わりやすくなります。
そのため、少し聞き方を変えます。
たとえば、
- もう一度見たい場面はありますか?
- 一人で入るとしたら不安な場面はありますか?
- 今日の中で、聞きにくかったことはありますか?
- 次に一緒に確認したい場面はありますか?
このように、答えやすい形にすると、不安が少し出てきやすくなります。
2. 「困っていること」ではなく「場面」で聞く
「困っていることある?」は、少し範囲が広い聞き方ですよね。
新人さんは、何を話せばよいか分からなくなることがあります。
その場合は、場面を絞ります。
- 今日の食事介助で不安だった場面はありますか?
- 移乗介助で、もう一度見たい動きはありますか?
- 記録で迷った内容はありますか?
- 報告するか迷った場面はありましたか?
場面を絞ると、新人さんも振り返りやすくなります。
3. すぐ答えられない場合は、書ける欄を用意する
口で答えるのが苦手な新人さんもいます。
その場で聞かれると緊張して、何も出てこないこともあります。
その場合は、振り返りシートに書ける欄を用意します。
大切なのは、長く書かせることではありません。
一言でもいいので、
- もう一度見たい
- ここが不安
- 聞きにくかった
という内容が残ることです。
4. 指導員コメントは評価ではなく「次に一緒に見ること」を書く
振り返りシートに指導員コメントを書くときは、評価だけで終わらせないことが大切です。
たとえば、
もう少し頑張りましょう。
だけだと、新人さんは次に何を意識すればよいか分かりにくいです。
それよりも、
次回は、移乗前の足元確認を一緒に見ていきましょう。
のように、次に一緒に見ることを書く方が、指導につながりやすくなります。


5. 次の勤務で実際に確認する
振り返りシートは、書いて終わりではありません。
次の勤務で、
前回、移乗前の足元確認が不安と書いてありましたね。今日はそこを一緒に見ていきましょう。
とつなげることで、新人さんは
「書いたことを見てもらえた」
「不安を出してもよかったんだ」
と感じやすくなります。
この小さな積み重ねが、次の相談しやすさにもつながります。


無料テンプレート|新人の本音を拾う振り返りシート
この記事の内容を現場で使いやすくするために、
新人の本音を拾う振り返りシートを作成します。
このシートは、新人さんを評価するためのものではありません。
新人さんの不安を少し出しやすくし、指導員が次に一緒に見る場面を確認しやすくするためのシートです。
⇩無料テンプレートのダウンロードはこちらから⇩
シートに入れる項目
| 項目 | 目的 |
|---|---|
| 日付 | いつの振り返りか分かる |
| 今日できたこと | 小さな前進を残す |
| まだ一人では不安なこと | 独り立ち前の不安を拾う |
| もう一度見たい場面 | 次の指導内容につなげる |
| 聞きにくかったこと | 本音に近い不安を拾う |
| 指導員コメント | 評価ではなく次の見通しを書く。一言でも褒めるとなおよい。 |
| 次回一緒に見ること | 次の勤務につなげる |
使い方
- 新人さんが勤務後に短く記入する
- 指導員が内容を確認する
- 指導員コメントには「次に一緒に見ること」を書く
- 次回勤務時に、実際にその場面を確認する
注意点
利用者さんの氏名や詳しい病名など、個人が分かる情報は書かないようにしてください。
施設内で使う場合も、個人情報の管理ルールに沿って扱うことが大切です。
施設外へ持ち出す場合は、イニシャルや記号にするなど、個人が分からない形にしてください。




AI活用|振り返り内容から次回の指導案を作る
AIは、新人教育の判断を代わりに行うものではありません。
ただ、振り返り内容を整理したり、次回の指導案のたたき台を作ったりする補助としては使えます。
使用する場合は、個人情報を入れないことが大前提です。
利用者さんの氏名、施設名、病名、具体的な個人情報は入力しないようにしてください。
プロンプト例
以下は、新人介護士の振り返り内容を個人が特定されない形にしたものです。
この内容から、次回の指導で一緒に確認した方がよい場面を3つ挙げてください。
新人を責める表現は避け、安心して確認できる声かけ例も作ってください。
【振り返り内容】
・今日できたこと:
・まだ一人では不安なこと:
・もう一度見たい場面:
・聞きにくかったこと:
AIが出した内容は、そのまま使うのではなく、必ず現場の状況に合わせて指導員やリーダーが確認してください。
Q&A
- 新人さんが「大丈夫です」と言ったら、そのまま信じてもいいですか?
-
信じることは大切です。
ただし、「大丈夫です」だけで終わらせず、
「もう一度見たい場面はありますか?」
「一人で入るとしたら不安な場面はありますか?」
のように、答えやすい形で確認すると安心です。新人さんを疑うのではなく、言葉にしにくい不安が残っていないかを確認するイメージです。
- 本音を聞こうとすると、新人さんが余計に緊張しませんか?
-
いきなり本音を聞き出そうとすると、かえって緊張する場合があります。
そのため、
「本当はどう思っていますか?」
と聞くよりも、「もう一度見たい場面はありますか?」
「聞きにくかったことはありますか?」のように、答えやすい項目にする方が自然です。
- 忙しくて毎日振り返りの時間が取れません。
-
毎日長い時間を取る必要はありません。
1日1項目だけでも、
「次に一緒に見ること」
が残れば、次の指導につながります。忙しい現場では、完璧な振り返りよりも、短くても続けやすい形にすることが大切です。
- 振り返りシートは新人さんの評価に使ってもいいですか?
-
評価目的が強くなると、新人さんは不安を書きにくくなることがあります。
このシートは、まずは評価ではなく、
「次に一緒に見ることを確認するため」
に使う方が向いています。評価と指導の記録を分けて考えると、新人さんも書きやすくなります。
- AIに振り返り内容を入れても大丈夫ですか?
-
個人情報を入れない形であれば、振り返りの整理や指導案のたたき台作成に使える場合があります。
ただし、
- 利用者さんの氏名
- 施設名
- 病名
- 個人が特定される内容
は入力しないでください。
AIの回答は、最終判断ではなく、あくまで考える材料として使うことが大切です。
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まとめ|「大丈夫です」を責めず、不安を出しやすい形にする
新人さんの「大丈夫です」は、必ずしも本当に大丈夫という意味とは限りません。
でも、それは新人さんが悪いわけではありません。
迷惑をかけたくない。
できない人だと思われたくない。
何が不安なのか、自分でもまだ言葉にできない。
そんな気持ちが重なって、「大丈夫です」という返事になることがあります。
一方で、指導員側も悩んでいます。
本当に大丈夫なのか分からない。
どこまで聞いてよいか迷う。
忙しい中で、丁寧に振り返る時間を作るのが難しい。
だからこそ、「大丈夫です」をなくそうとするのではなく、不安を少しだけ出せる形を用意することが大切です。
「もう一度見たい場面」
「まだ一人では不安なこと」
「聞きにくかったこと」
こうした項目があるだけでも、新人さんは少し書きやすくなります。
そして指導員は、その内容を評価ではなく、次に一緒に見るための材料として使う。
その積み重ねが、新人さんと指導員のすれ違いを少しずつ減らしていくのだと思います。
新人教育は、新人さんだけが頑張るものでも、指導員だけが背負うものでもありません。
教わる側にも不安があり、教える側にも迷いがあります。
だからこそ、お互いの不安が少し見えやすくなるだけで、次の関わり方は少し変わります。
新人さんが「分からない」と言えること。
指導員が「次はここを一緒に見よう」と伝えられること。
その一つひとつが、安心して学べる時間につながっていきます。
毎日の業務の中で、新人さんに向き合うのは簡単なことではありません。
忙しい中でも、少しでも分かりやすく伝えようとしている指導員の方も、本当に頑張っていると思います。
この記事や振り返りシートが、新人さんの不安を少し軽くし、指導員の方が次の一歩を考える小さな助けになれば嬉しいです。
焦らず、一つずつで大丈夫です。
新人さんも、指導員も、少しずつ一緒に進んでいける新人教育にしていきましょうね。
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