1.『自分の時間』、最後に持てたのはいつですか?在宅介護に奮闘する、あなたに伝えたいこと。
在宅でご家族の介護をされているあなたへ。
少しだけ、心に手を当てて、思い出してみてください。
- 朝、目覚めた瞬間に「今日も一日が始まる…」と、ため息をついていませんか?
- 夜、ようやく介護を終えても、物音にハッとして、ぐっすり眠れない日が続いていませんか?
- 「ありがとう」の一言が欲しくて頑張っているのに、ついイライラしてしまう自分に、後から落ち込んでしまうことはありませんか?
- 「もし、目を離した隙に何かあったら…」という不安が、常に頭の片隅から離れない。
- 自分のことはすべて後回し。気づけば『自分の時間』なんて、もうずいぶん持てていない…
もし、一つでも「私のことだ」と感じたなら、どうかこの先を読み進めてください。

こんにちは、介護福祉士のやなぎです。
私も特別養護老人ホームの主任として、多くのご家族が同じように悩み、心と身体をすり減らしながら、必死に頑張っている姿をたくさん見てきました。その姿は、まるでゴールの見えない、たった一人だけの冒険(クエスト)に挑んでいるかのようでした。
でも、知ってほしいのです。
あなたのその冒険を、少しだけ楽に進めるための”便利な道具”があることを。
この記事では、あなたの介護を少しだけ「楽」にし、あなた自身の「時間」と「心の余裕」を取り戻すための新しい選択肢、『介護テクノロジー』について、どこよりも分かりやすく、丁寧にお伝えしていきます。
もう、一人で抱え込まないでください。
この記事が、あなたの冒険の書に、新たな希望の1ページを書き加えるきっかけになることを願っています。


2.もう一人で頑張らないで。介護テクノロジーが、あなたの「時間」と「心の余裕」を生み出す”最高の相棒”になる理由



「テクノロジーって、なんだか無機質で冷たい感じがする…」
「機械に頼るなんて、愛情が足りないって思われないかしら…」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
その気持ち、とてもよくわかります。でも、私は断言します。
介護テクノロジーは、決して人の温もりを奪うものではなく、むしろ、その温もりを育むための”最高の相棒”になってくれる存在なんです。
なぜなら、テクノロジーは、これまで介護に費やしていたあなたの❝「時間」と「労力」を、目に見える形で生み出してくれる❞からです。
- 夜中に何度も安否確認のために起きていた時間を、ぐっすり眠れる時間に。
- 移乗介助で腰を痛めるかもしれないという不安を、安心して介助できる自信に。
- 「ちゃんと薬飲んだかな?」という心配を、「大丈夫」と確認できる安心感に。
そして何より、「もしも…」という精神的なプレッシャーを、「いざという時に知らせてくれる」という心の余裕に変えてくれるんですよね。
さらに、テクノロジーは介護されるご本人にとっても、「できなくなったこと」をサポートし、「まだできること」への自信を取り戻すきっかけになります。
この記事を読み進めていただければ、「テクノロジー=冷たい」というイメージが、「テクノロジー=私たちの生活を支えてくれる温かい相棒」というイメージに変わっているはずです。
まずは、どんな”相棒”がいるのか、一緒に見ていきましょう。


3.「これならうちでも使えるかも!」目的別に探す、在宅介護の頼れるテクノロジー図鑑
では、具体的にどんなテクノロジーがあるのでしょうか?
ここでは、あなたの「〇〇したい!」という目的に合わせて、頼れるテクノロジーたちを”図鑑”のようにご紹介します。


【見守り編】「もしも」の不安から解放されたいあなたへ
在宅介護で最も大きな精神的負担は、「目を離した隙に何かあったら…」という不安ですよね。そんな不安を「安心」に変えてくれるのが、見守り系のテクノロジーです。
- プライバシー配慮型 見守りセンサー
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カメラでの監視に抵抗がある方におすすめなのが、シルエットや熱で人の動きを検知するセンサーです。
ベッドからの離床や転倒を検知すると、スマホに通知が届きます。
パナソニックの「ライフリズムナビ」のように、睡眠状態(眠りの深さや呼吸数など)を把握できるものもあり、日々の健康管理にも役立ちます。 - 会話機能付き 見守りカメラ
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遠方に住むご家族が、お孫さんの顔を見せながら会話するといった使い方もできます。
映像で様子が確認できると、やはり安心感が違いますよね。
「みまもりCUBE」などの製品は、設置が簡単で、スマホを通じて双方向の会話も可能です。 - GPS(位置情報ツール)
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認知症の方の徘徊が心配な場合には、GPSが心強い味方になります。
靴に内蔵するタイプの「soranome(ソラノメ)」など、小型で本人に気づかれにくい製品も増えています。
【コミュニケーション編】「寂しい思いをさせたくない」と願うあなたへ
日中、お一人で過ごす時間が長いご本人にとって、”孤独感”は大きな問題です。そんな心の隙間を埋めてくれるのが、コミュニケーションをサポートするテクノロジーです。
- コミュニケーションロボット
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「LOVOT(らぼっと)」のように、温かい体温と生き物のような愛らしい動きで、人の心を癒してくれるロボットが注目されています。会話を楽しむだけでなく、ペットを飼うような感覚で、生活に潤いと笑顔をもたらしてくれますよね。
- メッセージロボット
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「BOCCO emo」などは、スマホで送ったテキストメッセージを、ロボットが代わりに読み上げてくれる優れもの。スマホ操作が苦手なご本人とも、気軽にコミュニケーションが取れます。
【排泄・移動支援編】「お互いの負担を減らしたい」と考えるあなたへ
排泄や移乗の介助は、ご本人の尊厳と、介護者の身体的負担に直結する、非常にデリケートな問題です。
- 排泄予測デバイス
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「DFree(ディーフリー)」は、超音波で膀胱の溜まり具合を検知し、トイレのタイミングをスマホに知らせてくれます。これにより、失敗を防ぎ、ご本人の自信と尊厳を守ることができます。
- 装着型アシストスーツ(介護ロボット)
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人を抱え上げる際の腰への負担を軽減してくれる、まさに”アシストスーツ”です。導入コストはかかりますが、介護者の身体を守り、長く介護を続けるためには非常に有効な投資と言えるでしょう。
【おまけ】「つい忘れがち…」な服薬や水分補給をサポートする便利ツールたち
- 服薬支援カレンダー/ディスペンサー:
時間になると光や音で知らせてくれる薬箱です。飲み忘れや飲み間違いを防ぎます。 - スマートスピーカー:
「アレクサ、今日の天気は?」「OK、Google、30分後にタイマーをかけて」など、声だけで様々な操作が可能です。水分補給の時間を知らせてもらうといった使い方も便利です。
【ここが知りたい!】レンタルと購入、どっちがお得?メリット・デメリットを徹底比較
「良さそうだけど、高いんでしょう?」と思いますよね。ここで重要なのが、「介護保険」の活用と「レンタル」という選択肢です。
項目 | レンタル(福祉用具貸与) | 購入(福祉用具購入) |
メリット | ● 初期費用が安い ● 身体状況の変化に合わせて交換可能 ● メンテナンスの手間がない ● 介護保険が使える(自己負担1〜3割) | ● 新品が手に入る ● 長く使えば割安になる場合も |
デメリット | ● 長期間だと購入より割高になることも ● 人気商品は品薄の場合がある | ● 初期費用が高い ● 身体状況に合わなくなっても交換不可 ● 処分に困る場合がある |
対象例 | 特殊寝台、車いす、移動支援ロボットなど | ポータブルトイレ、入浴補助用具、排泄予測支援機器など |
まずは地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、「うちの場合は何が使えるの?」と確認するのが一番の近道です。そして、多くの製品で「お試しレンタル」が可能です。
まずは試してみて、相性を確認するのが失敗しないコツですよ。


4.なぜ「楽」になるの?テクノロジーが心と身体の”重荷”を軽くする3つの秘密
「便利なのはわかったけど、本当に私たちの介護が楽になるの?」
その疑問、もっともです。
ここでは、テクノロジーがあなたの心と身体の”重荷”を軽くしてくれる「3つの秘密」を、少しだけ専門的な視点も交えて解き明かしていきます。
【身体の重荷】「腰、痛い…」が口癖のあなたへ。介護者の身体を守る科学的な力
介護で腰を痛める話、よく聞きますよね。これは「ボディメカニクス(身体力学)」を無視した無理な介助が原因であることが多いんです。
例えば、人を抱える時、自分の重心を低くし、相手を体に引き寄せ、足の力を使うのが基本です。
しかし、わかっていても、とっさの時や狭い場所では難しいもの…
ここで活躍するのが、アシストスーツなどの支援技術です。
ある製品のデータでは、中腰姿勢での負担を最大94%も低減するという報告もあります。
これは、あなたの腰にのしかかる重りを、テクノロジーが代わりに背負ってくれるようなものなのです。
「気合」や「根性」ではなく、科学的な根拠に基づいて身体を守る。
これが、テクノロジーがもたらす一つ目の”楽”なんです。
【心の重荷】「監視」じゃない、愛ある「見守り」とは?ご本人の気持ちとプライバシーを守るための大切な約束
テクノロジー導入で最も大切なのが、この視点です。
「監視」と「見守り」は、似ているようで全く違います。
- 監視とは… 一方的に相手を管理し、行動を制限しようとすること。
- 見守りとは… 相手のプライバシーや意思を尊重しつつ、いざという時に手を差し伸べられるように、そっと寄り添うこと。
この違いを生むのは、❝「対話」と「ルール作り」❞です。



「あなたを縛りたいんじゃない。ただ、心配なんだ。何かあった時に、すぐに助けられるようにするためのお守りなんだよ」と、あなたの気持ちを正直に伝えてみてください。
そして、「寝室には置かない」「日中、人がいる時はカメラをオフにする」など、❝お互いが安心できるルール❞を一緒に決めることが、信頼関係を壊さない何よりの秘訣です。
テクノロジーは、愛ある「見守り」を実現するためのツールなんですよね。
【未来への希望】「できなくなった」を「またできた!」に変える。ご本人の自信と意欲を育むテクノロジーの可能性
テクノロジーは、介護者のためだけのものではありません。
ご本人の「自立」という畑に、新しい希望の種をまき、育てるための”最高の農具”にもなり得ます。
例えば、歩行アシストロボットを使ってリハビリに励んだ結果、「一人でトイレまで歩けるようになった」という方がいます。排泄予測デバイスのおかげで、「失敗するかも…」という不安から解放され、デイサービスに積極的に参加できるようになった方もいます。
一つ「できた!」が増えるたびに、ご本人の表情は明るくなり、自信を取り戻していきます。
その自信が、さらなる「やってみよう」という意欲を引き出す。
このポジティブな循環を生み出す力こそ、テクノロジーが持つ最大の可能性であり、三つ目の”楽”の秘密なんです。
5.失敗しない!介護テクノロジー導入を成功させる「3つの安心ステップ」完全ガイド
「よし、うちも考えてみようかな!」そう思ったあなたへ。
焦りは禁物です。
勢いで導入して「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、ゲームのクエストをクリアするように、一つずつ着実にステップを進めていきましょう。
【ステップ1:まず相談】「うちには何が必要?」一人で悩まず専門家(ケアマネ等)に頼ろう
最初のステップは、一人でカタログを眺めることではありません。
あなたの介護の”軍師”である、ケアマネジャーや地域包括支援センターの専門家に相談することです。



「夜、何度も起きるのが辛いんです」
「日中の話し相手がいなくて寂しそうで…」
あなたの悩みを具体的に伝えれば、専門家が「それなら、こんなサービスや機器がありますよ」「補助金の対象になるかもしれません」と、最適な作戦を一緒に考えてくれます。
彼らは、いわば介護の装備(テクノロジー)に関する情報が満載の”攻略本”を持っているような存在です。
利用しない手はありません。


【ステップ2:じっくり対話】ご本人を傷つけない、上手なテクノロジーの提案方法と伝え方のコツ
最大の難関が、ご本人の同意を得ることかもしれませんね。
真正面から「あなたを見守るためにカメラを置きたい」と言えば、「監視する気か!」と反発されるのは目に見えています。
大切なのは、伝え方の工夫です。
- メリットを具体的に伝える:
「これがあれば、夜中に何度も起こさなくて済むから、お互いゆっくり眠れるよ」 - 「お守り」という言葉を使う:
「何かあった時にすぐ気づける、お守りみたいなものだよ」 - 第三者の意見を借りる:
「ケアマネさんも、あった方が安心だって言ってたよ」 - 選択肢を提示する:
「カメラは嫌かもしれないけど、ベッドから起きたらわかるセンサーだけならどうかな?」
あくまで主役はご本人です。
ご本人の「嫌だ」という気持ちを尊重し、時間をかけて、粘り強く対話することがクリアの鍵となります。


【ステップ3:お試し体験】「いきなり購入」は絶対NG!レンタルやお試しサービスで相性をチェック
さあ、最終ステップです。
それは、「いきなり買わない」ということ。
どんなに評判の良い製品でも、あなたの家の環境やご本人との相性に合うとは限りません。
- Wi-Fiの電波は安定しているか?
- 操作は本当に簡単か?
- ご本人が嫌がらないか?
- 導入することで本当に意味があるのか?
これらを確認するために、必ず「お試し期間」や「レンタルサービス」を活用しましょう。
多くのメーカーや介護用品事業者が、無料または安価なお試しプランを用意しています。
実際に使ってみて、「これなら大丈夫!」と確信できてから、本格導入を検討するのが、失敗しないための鉄則です。
6.まとめ:これだけは忘れないで。テクノロジーと上手に付き合うための「5つの心得」
最後に、介護テクノロジーという”相棒”と、これから上手に付き合っていくための「5つの心得」をまとめておきます。
- 【心得一】一人で悩まない。
必ずケアマネジャーなどの専門家に相談し、チームで最適な”道具”を選びましょう。 - 【心得二】主役は、ご本人。
テクノロジーは、ご本人の意思と尊厳を守るためのもの。決して「監視」や「管理」の道具にしてはいけません。 - 【心得三】テクノロジーは万能じゃない。
あくまで人の温かいケアを「補う」もの。
機械に任せっきりにするのではなく、生まれた時間で、ぜひご本人と向き合う時間を増やしてください。 - 【心得四】まずはお試しから。
いきなり購入はリスクが高いです。
レンタルやお試しサービスで、じっくり相性を見極めましょう。 - 【心得五】生まれた時間を、自分のために。
テクノロジーの最大の目的は、介護者であるあなたの「心の余裕」を生み出すこと。
少しでも楽になった時間で、どうかあなた自身のことも大切にしてくださいね。


7.おわりに:テクノロジーで生まれた「10分の心の余裕」。その時間で、ぜひご自身の好きなことをしてくださいね。
在宅介護は、本当に…本当に大変です。
綺麗事だけでは乗り切れない日も、たくさんありますよね。
でも、テクノロジーを上手に活用することで、ほんの少しだけでもあなたの肩の荷が軽くなるかもしれません。
夜中にスマホで安否を確認できるようになったことで、安心して眠れる5分。
移乗介助の負担が減って、腰をさする時間がなくなった5分。
そうして生まれた、たった「10分の余裕」
その時間で、どうかゆっくりと温かいお茶を飲んでください。
好きな音楽を聴いてください。
ベランダの植物を眺めて、ぼーっとするのもいいですね。
介護テクノロジーは、介護を楽にするためのツールであると同時に、あなたが、あなた自身の人生を取り戻すためのツールでもあるんです。
あなたは、一人ではありません。
この記事が、あなたが新しい”相棒”と共に、明日への一歩を踏み出す、小さな勇気となれたなら嬉しいです。

