1.はじめに
4月が近づくと、新人さんを迎える準備を少しずつ考え始める施設も多いと思います。
新人教育や新人研修はとても大切ですし、できることなら丁寧に、分かりやすく、安心して現場に入ってもらえるように進めたいですよね。
ただ、実際の介護現場では、毎日の業務に追われながら教育を進めていくことも多く、思うように時間が取れなかったり、教えたいことはたくさんあるのに、その日の状況で予定通りに進まなかったりすることも少なくありません。
しかも介護現場は、一日一日がまったく同じようには進みません。
利用者さんの体調や気分、睡眠、食事の進み具合、排泄のタイミング、離床の状況、転倒しそうな動き、急な不穏、家族対応、職員配置の違いなど、毎日少しずつ条件が変わります。
昨日は落ち着いていた方が今日は不穏気味だったり、普段はスムーズな移乗でも今日はふらつきが強かったり、食事中にいつもよりむせやすい日があったり。
排泄パターンも毎日ぴったり同じではありませんし、午前中は元気でも午後になるとぐったりしてしまう方もいます。
「この前はこうだったのに、今日は違う」ということが、介護現場では本当によく起こります。
だからこそ新人さんにとっては、手順を教わっただけでは足りない場面がどうしても出てきます。
- これは様子を見てよいのか
- すぐに先輩を呼んだほうがよいのか
- 一人で続けてよいのか
- どこに注意して見ればよいのか
- 自分が“できている”と思っている内容で本当に足りているのか
こうしたことに迷いやすいんですよね。
さらに、指導する職員が毎日同じとは限りません。
早番、日勤、遅番、準夜勤、夜勤と関わる人が変わることも多いですし、休みや配置の都合で別の職員が見ることもあります。
すると、同じ新人さんを見ていても、職員によって気になるポイントが違ってきます。
- ある職員は「もうできている」と感じている
- 別の職員は「まだ一緒に見たほうが安心」と感じている
- 新人さん本人は「できているつもりだったけれど、まだ見えていないことがあった」と気づく
そんなズレも起こりやすくなります。
僕自身も新人だった頃は、毎日覚えることが多くて、何ができていて何がまだ不安なのか、自分でもよく分からないまま一日が終わることがありました。
目の前のことに必死で、「今日は何ができれば十分なのか」「今は何を覚える段階なのか」が見えないまま、気持ちだけが焦ってしまうこともありました。
だからこそ今は、新人教育では
「どこまでできるのか」
「どこにまだ不安があるのか」
「次に何を確認したいのか」
が見える形があることが、とても大切だと感じています。
この記事では、介護の新人教育・新人研修で使いやすいチェックシートや関連テンプレートのフル版を、無料で配布しています。
あわせて、現場で無理なく使うための考え方や、AI活用で施設ごとに内容を調整する方法もまとめました。
「一気に完璧にする」ためではなく、
迷いを減らしながら、少しずつ育てていくための土台として使ってもらえたら嬉しいです。
2.介護の新人教育・新人研修でつまずきやすい理由
新人教育が難しくなりやすいのは、単純に「教えることが多いから」だけではありません。
介護現場ならではの難しさが、いくつも重なっています。
毎日まったく同じではないから、手順だけでは足りない
介護現場では、一日の流れがある程度決まっていても、実際にはその通りに進まないことが少なくありません。
たとえば、
- 食事中に急にむせ込みが増える
- 食欲がいつもより落ちている
- 排泄のタイミングが重なる
- トイレ誘導の途中でふらつきが強くなる
- 離床の予定がずれる
- 不穏な訴えが増える
- 転倒しそうな動きが見られる
- 体調が悪そうでも、どの程度急いで報告すべきか迷う
こうした場面は、現場では珍しくありません。
新人さんにとって難しいのは、
「この前教わった通りに動けばいい」
では終わらないことです。
手順は分かっていても、
- 今は続けてよいのか
- 中断して相談したほうがよいのか
- いつもと違うのかどうか
- どこに注意して見ればよいのか
- 先に何を優先すべきか
ここが分からず、迷いやすいんですよね。
しかも、こうした判断は、現場の空気や利用者さんごとのいつもの様子を少しずつ知っていく中で育っていくものです。
新人さんにとっては、分からないことが悪いのではなく、分からない場面が多いのが自然なんです。
だからこそ、「迷ったときにどう動くか」が最初から共有されていることが、とても大切になります。

指導する人が変わることで、見ているポイントに差が出やすい
介護現場では、ひとりの新人さんを同じ職員だけがずっと見るとは限りません。
勤務の流れ上、複数の職員が関わることになります。
そうすると、たとえば食事介助ひとつでも、
- Aさんは「声かけは落ち着いていて良い」と見ている
- Bさんは「食形態確認がまだ不安」と見ている
- Cさんは「むせの観察はもう少し一緒に見たい」と感じている
というふうに、見ているポイントが少しずつ違うことがあります。
これは誰かが悪いということではなく、場面が違えば、見える課題も違うから自然に起こることです。
ただ、このズレをそのままにすると、
- 新人さんは「もうできていると思っていたのに」と戸惑う
- 指導者側も「どこまで進んだのか」が曖昧になる
- 教えたつもり、分かったつもりが増える
- 人によって言うことが違うように感じて、新人さんが余計に不安になる
ということにつながりやすくなります。
介護現場では、やり方の細かな違いが多少あること自体は自然です。
でも、どこを見るかまでバラバラになると、教育としては不安定になりやすいです。
だからこそ、見る視点や確認の段階をそろえるための土台として、チェックシートやふり返りの仕組みが必要になるのだと思います。
自分ではできているつもりでも、まだ見えていないことがある
新人教育では、ここもとても大きいと思います。
たとえば食事介助で、「食事介助はできます」と感じていても、実際には
- 食形態の最終確認
- 食事前の姿勢の調整
- 一口量やペースの見方
- むせや咳込みの観察
- 疲れてきた様子への気づき
- 服薬前後の注意
- 食後の記録や報告
まで含めて見られているかというと、まだ十分ではないことがあります。
排泄介助でも同じです。
- トイレ誘導のタイミング
- 羞恥心への配慮
- 立位時の安全確認
- 衣類の乱れや寒さへの配慮
- 便や尿の状態観察
- 排泄後の表情や疲れ具合
- 記録や報告へのつなぎ
このように、“できる”の中にはいくつも細かい視点があるんですよね。
だからこそ、「できる・できない」だけで見てしまうと、本当の意味でどこまで理解しているかが分かりにくくなります。
このズレは、新人さんが悪いわけでも、教える側が悪いわけでもありません。
介護の仕事が、それだけ細かい観察や配慮の積み重ねで成り立っているということだと思います。
だからこそ、細かい視点を一つずつ見える化していくことが、教育ではとても大事になります。

新人さん本人が「何が不安か」を言葉にしにくい
新人さんは、ただでさえ覚えることが多いです。
その中で「どこが不安か」まで整理して話すのは、意外と難しいことがあります。
- 何となく不安だけど、どこを言えばよいか分からない
- 質問したいけれど、忙しそうで聞きにくい
- 自分がどこまで分かっていて、どこが曖昧なのか整理できない
- うまく言葉にできないまま、その日の勤務が終わってしまう
こういう状態って、かなりあると思います。
だからこそ、
言葉にしやすくする仕組み
書き出せる欄
振り返るタイミング
があることが大切になります。
「不安があるなら言ってね」だけでは、実は言えないことも多いです。
なぜなら、自分でもどう不安なのかがわからないことがあるからです。
書ける欄がある、確認する時間がある、次に何を見るかが見える。
そうした仕組みがあることで、ようやく不安が表に出てきやすくなることがあります。
3.チェックシートが役立つ理由
新人教育でチェックシートが役立つのは、単に「抜け漏れを防ぐため」だけではありません。
実際には、教える側の不安を減らすことにも、新人さんの不安を軽くすることにもつながります。
教える内容の抜け漏れを減らしやすい
忙しい現場では、その日の利用者さんの状態や職員配置によって、予定通りに教育が進まないことがよくあります。
たとえば今日は食事介助を中心に見てもらおうと思っていても、
- 急な排泄介助が重なる
- 離床介助が重なる
- 転倒リスクが高い場面が出る
- 体調不良の利用者さんへの対応が入る
- 記録や申し送りに時間がかかる
といったことが起こると、あっという間に時間は過ぎてしまいます。
そうなると後から、
- 食事介助はどこまで見学できたのか
- 記録は入力までやってみたのか
- 感染対策は説明だけだったのか、実際に確認できたのか
- 申し送りの聞き方は伝えられたのか
- 排泄介助の流れはどこまで一緒に見られたのか
といった内容が曖昧になりやすいです。
チェックシートがあると、「今日はここまで確認できた」「ここはまだ見られていない」と見返しやすくなるので、忙しい現場でも教育の流れを見失いにくくなります。
指導者が変わっても共有しやすい
「見学した」「一部実施した」「見守りがあればできる」「一人でできる」「まだ不安あり」など、段階で見られるようにしておくと、指導者が変わっても認識を合わせやすくなります。
これがとても大きいです。
「できる」の一言だけでは分からないことも、
- どこまで進んでいるのか
- 何にまだ不安があるのか
- 次にどこを見ればよいのか
- どこはまだ一人で任せないほうがよいのか
が見えやすくなるからです。
しかも、複数の職員で関わるときは、「誰が教えたか」よりも「どこまで確認したか」が大事になってきます。
その共通の土台があるだけで、教育の安定感はかなり変わります。
新人さん本人も進み具合を把握しやすい
新人さんは、どうしても「まだできていないこと」に意識が向きやすいです。
- 利用者さんの名前を覚えきれていない
- 記録に時間がかかる
- 声かけの順番に迷う
- 移乗介助に自信がない
- 申し送りのメモが追いつかない
そうしたことばかりが目につくと、「自分は何もできていない気がする」と感じやすくなります。
でも実際には、
- あいさつが自然にできるようになってきた
- 物品の場所を覚えてきた
- 申し送りの流れが少し分かってきた
- 分からないことを相談できるようになってきた
- 食事介助の見学で気をつける点が分かってきた
- 危ないと思ったときに立ち止まれていた
という前進もあるはずです。
チェックシートがあると、そうした前進も見える形で残しやすくなります。
評価表ではなく、見通しを持つための道しるべになる
ここは大事にしたいところです。
チェックシートというと、「評価される」「できていないことを見られる」と感じる方もいるかもしれません。
でも新人教育で本当に大切なのは、できていないことを責めることではなく、どこまで進んでいるかを見ながら、安心して少しずつ身につけていくことだと思います。
- 今日は申し送りの流れがつかめれば十分
- 今週は食事介助と記録の基本が分かれば大丈夫
- 今月は一人でできることと、まだ一緒に確認したいことを整理できればよい
- 今は不安があっても、次に何を見ればいいかが分かれば前に進める
こうした見通しがあるだけで、新人さんも指導する側もずいぶん動きやすくなります。
4.僕が新人だった頃にしんどかったこと
新人教育の話を書くとき、やはり思い出すのは自分が新人だった頃のことです。
今振り返ると、しんどさの正体は「覚えることが多い」だけではなかったように思います。
何を優先して覚えればいいのか分からなかった
介護現場では、どの業務も大切です。
- 利用者さんへの接し方
- 介助の基本
- 記録のルール
- 申し送りの聞き方
- 物品の場所
- 緊急時の動き
全部大事だからこそ、逆に「まず何から押さえればいいのか」が見えにくいんですよね。
あれも大事、これも大事、全部大事。
だからこそ、新人の頃は頭の中がいっぱいになりやすいと思います。
“できていないこと”ばかりが目についた
新人の頃は、どうしても「まだできないこと」に意識が向きやすいです。
- 利用者さんの名前を覚えきれていない
- 移乗のタイミングが不安
- 記録に時間がかかる
- 申し送りで何をメモしたらいいか迷う
- 声かけの順番が分からなくなる
- 一生懸命やっても他の人と比べて遅くなってしまう
でも本当は、
- 分からないことを相談できていた
- 声かけは丁寧にできていた
- 記録の流れは少しずつ分かってきていた
- 一日の動き方をつかみ始めていた
- 危ないと思ったときに立ち止まれていた
そんな前進もあるはずです。
それが見えにくいと、必要以上に自信をなくしやすくなります。
自分ではできているつもりでも、まだ見えていないことがあった
これも新人教育ではよくあることだと思います。
たとえば食事介助でも、「食べてもらうこと」はできているつもりでも、
- 食形態の最終確認
- むせやすさの観察
- 姿勢の整え方
- 服薬前後の注意
- 食事ペースへの配慮
- 食後の記録へのつなぎ
といったところまで見ると、まだ抜けがあることがあります。
つまり、「できるつもり」と「現場で本当に安心して任せられる状態」には、少し差があることがあるんですよね。
だからこそ、そこを責めるのではなく、細かな視点を一緒に見える化して確認していくことが大切だと思います。
“今日はここまでで大丈夫”が見えると安心しやすい
今思うのは、新人さんに必要なのは「全部できるようになること」より前に、今日は何を覚える日なのかが見えることなのだと思います。
- 今日はフロアの流れをつかめれば十分
- 今日は食事介助の見学ができれば大丈夫
- 今週は記録の基本が分かれば大丈夫
- 今月は一人でできることと、まだ一緒に確認したいことを整理できればよい
この見通しがあるだけで、気持ちの落ち着き方はかなり違うと思います。
5.今回無料配布する介護の新人教育・新人研修Excelテンプレートの内容
今回の記事では、介護の新人教育・新人研修で使いやすいように、チェックシート・スケジュール・振り返りに使えるExcelテンプレートセットを無料で配布しています。
入っている主な内容は、次の通りです。

基本の教育テンプレート
- 新人教育チェックシート基本版
- 1日目オリエンテーション確認表
- 1週間ふり返りシート
- 2週間シート
- 1か月面談・ふり返りシート
- 3か月フォローシート
- 独り立ち前チェックシート
日々の流れを見やすくするテンプレート
- 1日の流れシート
- 24時間仕様の流れ表
- 早番・日勤・遅番・準夜勤が一覧で見えるシート
- 夜勤専用の流れシート
指導・共有に使いやすい補助シート
- 指導者引き継ぎシート
- 年間スケジュール表
- 教育担当者用の進め方メモ
- 申し送りの聞き方・書き方ミニガイド
- 記録の書き方ミニ例文集
- 迷ったらこれカード
安全面の振り返りに使えるシート
- ヒヤリハット振り返りメモ
- 迷いやすい場面メモ
Excelで使いやすい補助機能
- プルダウン入力
- 自動集計
- 進捗ダッシュボード
- サンプル入力版
AI活用シート
- AI活用プロンプト早見表
- 施設別調整用のプロンプト例
- コメント整理・面談整理用のプロンプト例
ここまでまとめて無料で配布するのは、
「まず現場で使ってみてほしい」
「自分たちの施設に合う形を見つけるきっかけにしてほしい」
と思ったからです。
実際のテンプレートはこのような形です
今回のテンプレートは、介護の新人教育を少しでも見える形にしやすいように、チェックシートだけでなく、1日の流れや振り返り、進捗確認に使えるシートまでまとめています。
すべてを一度に使う前提ではなく、必要なものを選んだり、使わない部分は消したり非表示にしたりしながら、自施設で使いやすい形に整えて使っていただけるようにしています。
ここでは、その中から代表的なテンプレートをいくつかご紹介します。
1.新人教育チェックシート基本版
新人さんの進み具合を、見学・一部実施・見守りで実施・一人で実施・まだ不安ありといった形で見えるようにしたシートです。
「できる・できていない」だけで分けず、どの段階にいるのかを共有しやすくしています。

2.1日目オリエンテーション確認表
初日に必要な確認を整理しやすいシートです。
フロアの流れや物品の場所、記録、相談先など、安心して動くための土台を見える形で確認しやすくしています。

3.1日の流れが見えるシート
早番・日勤・遅番・準夜勤など、時間帯ごとの流れを見えるようにしたシートです。
新人さんが「今どんな動きがあるのか」をつかみやすく、指導する側も説明しやすくなります。

4.ふり返りシート(1週間・1か月など)
新人さんが、
できるようになってきたこと
まだ不安があること
次に確認したいこと
を整理しやすいようにしたシートです。
教える側と新人さんの認識をそろえやすくするためにも役立ちます。

5.進捗確認や補助シートの例
テンプレートの中には、チェックシートだけでなく、進捗を見やすくするシートや、迷いやすい場面を整理する補助シートも入れています。
「何を使えばいいか迷う」という場合は、まずは基本シートから使い始めて、必要に応じて足していくのがおすすめです。

必要なものを選んで、自施設向けに整えて使ってください
今回のテンプレートは、できるだけ幅広い施設や場面で使いやすいように、少し内容を厚めに入れています。
そのため、最初から全部をそのまま使うというよりは、
- 今の施設で必要なシートを選ぶ
- 使わない部分は消す、または非表示にする
- 文言を自施設向けに整える
- 少しずつ使いやすい形に育てていく
という使い方がおすすめです。
たとえば、
- まずは基本版、1日目、1週間、1か月だけ使う
- 1日の流れや夜勤表は後から足す
- 施設別のシートだけ残して、他は非表示にする
- AIシートは教育担当だけ使う
- ダッシュボードは慣れてから使う
このくらいの使い方でも十分です。
「全部入りだから、全部使わないともったいない」ではなく、
“今の自施設で使いやすい形にしていく”
という気持ちで見てもらえたらと思います。
★テンプレートのダウンロードはこちら★
今回ご紹介したテンプレートは、Excel形式でまとめてダウンロードできるようにしています。
新人教育チェックシートだけでなく、1日目確認表、1日の流れ、ふり返りシート、補助シートまで入れていますので、必要なものを選びながらご活用ください。
6.このテンプレートは、どう使うと続けやすいか
テンプレートは、ただ配るだけでは十分ではありません。
大切なのは、どのタイミングで何を確認するために使うかがはっきりしていることです。
1日目は“安心して動ける土台”を作る
初日は、介助技術を一気に覚える日ではなく、まずは「この職場でどう動くのか」をつかむ日だと考えたほうが無理がありません。
特に大切なのは、
- どこに何があるか分かる
- 誰に聞けばいいか分かる
- 記録や申し送りがどこで行われるか分かる
- 事故時・急変時に一人で抱え込まない流れを知る
- 「迷ったら相談していい」が分かる
このあたりです。
初日に全部覚えられなくても大丈夫です。
でも、「分からないときにどう動けばいいか」が少し見えるだけで、かなり安心しやすくなります。
1週間では“つまずきやすいところ”を拾う
最初の1週間は情報量が多いので、「どこがまだ不安か」を見逃さないことが大切です。
- 利用者さんの名前や特徴がまだ混ざっていないか
- 記録の文章に迷っていないか
- 食事介助で食形態や姿勢確認に注意が向いているか
- 排泄介助で羞恥心への配慮ができているか
- 移乗介助で安全確認の順番が曖昧になっていないか
- 分からないことを抱え込んでいないか
この時期は、「できるかどうか」を強く見るというより、どこで迷いやすいかを拾うイメージが大切だと思います。
2週間から1か月では“段階の違い”を見ていく
この頃になると、少しずつできることが増えてきます。
ただ、その一方で、
- 見学はできる
- 一緒ならできる
- 見守りがあればできる
- まだ一人だと不安
という差も見えてきます。
この段階をちゃんと見ないと、「もうできると思っていたのに」や「まだ任せるのは不安だった」が起きやすいです。
だからこそ、二択ではなく、段階で見ることが大切だと思います。
3か月や独り立ち前では“残っている不安”を見逃さない
3か月や独り立ち前になると、表面上はかなりできるように見えることもあります。
でもこの時期こそ、
- 個別対応で迷いやすいところ
- 忙しい場面で抜けやすいところ
- 安全面でまだ気になるところ
- 申し送りや記録で自信が持てないところ
が残っていることがあります。
ここを見落とさずに整理できると、独り立ちの不安もかなり減りやすくなります。
7.チェックシートに入れておきたい基本項目【具体例つき】
あいさつ・接遇
確認したいこと
- 利用者さん・職員へあいさつができる
- 表情や声の大きさがきつくなりすぎていない
- 介助前に一言声をかけてから関わる
- 利用者さんの目線に合わせて話しかけられる
- いきなり体に触れない
- 呼び方や話し方が乱暴にならない
- 生活の場としての尊厳を意識できる
申し送りの確認
確認したいこと
- 申し送りの時間と場所が分かる
- 今日特に大切な情報を意識しながら聞ける
- メモを取りながら聞ける
- 聞き取れなかったことを後から確認できる
- 状態変化の情報を自己判断で流さない
- 「誰の何に注意すべきか」を押さえられる
記録の基本
確認したいこと
- 記録端末や用紙の扱いが分かる
- いつ、何を記録するか分かる
- 主観ではなく事実を中心に書ける
- 食事量、水分量、排泄状況などの記録ルールが分かる
- 分からない表現を自己流で済ませず確認できる
- 後から読み返しても状況が分かる文章を意識できる
食事介助
確認したいこと
- 食形態を確認できる
- 姿勢やテーブルの高さを整えられる
- 一口量やペースを意識できる
- むせ、咳込み、疲れた様子に気づける
- 食事量や水分量を記録につなげられる
- 食事前後の流れまで含めて見られる
排泄介助
確認したいこと
- トイレ誘導のタイミングをつかめる
- 羞恥心への配慮ができる
- 立位や移乗の安全確認ができる
- 失禁時の対応を落ち着いて行える
- 排泄状況を記録や報告につなげられる
- 排泄後の表情や疲れ具合にも気づける
移乗介助
確認したいこと
- 介助前にブレーキ、足元、周囲環境を確認できる
- 利用者さんの状態に応じた介助方法を理解している
- 声かけと動作のタイミングを合わせられる
- 無理な引き上げをしていない
- 一人介助が難しい場面を判断できる
- 少しでも不安があれば相談できる
入浴介助
確認したいこと
- 入浴前後の体調確認ができる
- 着脱衣の流れを理解している
- 皮膚状態の観察ができる
- 転倒予防を意識して介助できる
- 羞恥心と寒暖差への配慮ができる
- 入浴後の水分や表情の変化にも気づける
感染対策
確認したいこと
- 手洗い・手指消毒のタイミングが分かる
- 手袋、エプロンの使用場面が分かる
- 汚染・清潔の区別を意識できる
- 共用物品の扱いに注意できる
- 何となくではなく、場面ごとに使い分けを理解している
報連相
確認したいこと
- 迷ったときに早めに相談できる
- 状態変化を自分の中だけで止めない
- 報告の優先順位を意識できる
- 相談内容を簡潔に伝えようとできる
- 「このくらいで聞いていいのかな」を抱え込みすぎない
緊急時対応
確認したいこと
- 急変時の第一報先が分かる
- 転倒、誤嚥、意識変化などの初期対応を知っている
- 一人で判断せず、まず呼ぶ意識がある
- 事故後の報告・記録の流れを理解している
- 落ち着いて「何を優先するか」を考えられるようになっていく
8.AI活用で施設ごとにチェックシートを調整する方法【入力例・出力例つき】
無料テンプレートは便利ですが、そのままでは各施設にぴったり合わないことも多いです。
特養、老健、デイでは、重視したい視点が少しずつ違うからです。
そこでAIを使うと、各施設向けのたたき台を作る時間をかなり短くできます。
使い方の基本
AIには、次の情報を具体的に伝えると使いやすくなります。
- 施設の種類
- 勤務帯
- 最初の何週間・何か月で使うものか
- 特に大切にしたい項目
- やさしい表現にしたいか
- A4で見やすくしたいか
- 項目を増やしすぎたくないか
- 自施設の流れに寄せたいか
例1:特養向けにチェックシートを調整する
入力例
以下の新人教育チェックシートを、特別養護老人ホームの日勤帯向けに調整してください。
元の項目:
・あいさつ
・申し送り確認
・記録
・食事介助
・排泄介助
・移乗介助
・入浴介助
・感染対策
・報連相
・緊急時対応条件:
・最初の1か月で使いやすい内容にする
・フロア全体の動きがつかめる項目を入れる
・利用者さんごとの個別注意点を確認する欄も入れる
・新人さんが見ても分かりやすい、やさしい表現にする
・A4で印刷しやすい分量にする
出力例
特別養護老人ホーム・日勤帯向け 新人教育チェックシート(1か月用)
1. 基本姿勢
□ 利用者さん・職員へあいさつができる
□ 介助前に一言声をかけてから関わることができる
□ 分からないことをそのままにせず相談できる2. フロアの流れ
□ 日勤帯の主な流れを説明できる
□ 食事・排泄・離床・入浴の時間帯を把握している
□ 忙しくなりやすい時間帯を理解している3. 申し送り・情報確認
□ 申し送りで重要な情報をメモできる
□ 利用者さんごとの注意点を確認できる
□ 状態変化を先輩に報告できる
例2:デイサービス向けに書き換える
入力例
以下の新人研修チェックシートを、デイサービス向けに調整してください。
元の項目:
・あいさつ
・申し送り確認
・記録
・食事介助
・排泄介助
・移乗介助
・入浴介助
・感染対策
・報連相
・緊急時対応条件:
・送迎、レクリエーション、入浴対応、短時間での利用者対応を入れる
・新人さんが最初の2週間で押さえたい内容に絞る
・やさしく分かりやすい表現にする
出力例
デイサービス向け 新人研修チェックシート(2週間用)
1. 基本対応
□ 来所時に利用者さんへ笑顔であいさつできる
□ 利用者さんの名前と座席の位置を少しずつ覚えている
□ 分からないことを早めに相談できる2. 一日の流れ
□ 到着から帰宅までの大まかな流れを理解している
□ 入浴、食事、レクリエーションの時間を把握している
□ 忙しくなりやすい時間帯を理解している3. デイ特有の業務
□ 送迎前後の確認事項を理解している
□ レクリエーション時の見守りポイントを把握している
□ 短時間の中で体調変化に気づく意識を持てている
AIは、こうしたたたき台づくりに使うとかなり便利です。
ゼロから考えるより、まず出してもらってから現場に合わせて整えるほうが負担が少なくなります。
9.AI活用で指導コメントや面談メモを整える方法【入力例・出力例つき】
AIは、チェックシート本体だけでなく、指導コメントや面談メモの整理にも役立ちます。
教育担当は忙しいので、ここはかなり実用的な使い方だと思います。
例1:1週間コメントを整える
入力例
以下は新人職員さんの1週間の様子メモです。
責める表現を避け、できている点と次に意識したい点を、やさしく短くまとめてください。
面談でそのまま読みやすい文章にしてください。メモ:
・あいさつは落ち着いてできている
・利用者さんへの声かけも丁寧
・食事介助は見学後、一部介助をやってみた
・食形態の確認を忘れそうになることがある
・記録はまだ時間がかかる
・分からないときに相談はできている
出力例
あいさつや利用者さんへの声かけが落ち着いていて、丁寧に関われていました。食事介助にも少しずつ取り組めていて、分からないことをそのままにせず相談できているのも良かったです。今後は、食事前の食形態確認を一つずつ落ち着いて行うことと、記録の流れに少しずつ慣れていくことを意識していきましょう。
例2:1か月面談メモを整理する
入力例
以下のメモをもとに、新人職員さんの1か月面談用に整理してください。
「できるようになったこと」「まだ不安なこと」「次の目標」の3つに分けて、やさしい表現でまとめてください。メモ:
・フロアの流れはだいぶ分かってきた
・食事介助は落ち着いてできることが増えた
・排泄介助はまだ声かけの順番に迷うことがある
・移乗介助は安全確認をしながらだとゆっくりならできる
・記録は以前よりは早くなった
・申し送りの要点をメモするのはまだ難しい
出力例
【できるようになったこと】
フロアの一日の流れが少しずつつかめてきており、食事介助も落ち着いて行える場面が増えてきました。記録についても、以前より流れに慣れてきています。【まだ不安なこと】
排泄介助では声かけの順番に迷うことがあり、申し送りでは要点を整理しながらメモを取ることにまだ難しさがあります。移乗介助も、安全確認をしながら進めるときに慎重さが必要です。【次の目標】
排泄介助の声かけの流れを一つずつ確認しながら身につけること、申し送りでは今日特に大切な情報を絞ってメモできるよう意識することを次の目標にしていきましょう。
例3:やわらかいフィードバック文に整える
入力例
以下の内容を、新人さんが責められたと感じにくく、安心して次につなげやすいフィードバック文に整えてください。
丁寧で落ち着いた言い方にしてください。内容:
・記録の抜けが何回かあった
・でも利用者さんへの対応は丁寧
・分からないことを相談できている
・記録前にメモを取る習慣をつけるとよさそう
出力例
利用者さんへの対応が丁寧で、分からないことをきちんと相談できているところはとても良い点です。記録については、少し抜けが出る場面もありましたが、記録前に短くメモを取る習慣をつけていくと、より落ち着いてまとめやすくなると思います。少しずつ自分のやりやすい形を一緒に整えていきましょう。
AIは、こうした言葉の整理にも役立ちます。
教育担当が忙しい中で、コメントを一から考える負担を少し軽くしてくれると思います。
10.AIを使うときの注意点
AIは便利ですが、介護現場で使うときには気をつけたいこともあります。
利用者さんの個人情報は入力しない
氏名、生年月日、住所、具体的な病名、家族構成など、個人が特定される情報は入れないようにします。
AIに渡すときは、「利用者A」「新人職員」などに置き換えるほうが安心です。
AIの出力はそのまま使わず、人が確認する
AIは、たたき台や整理には便利ですが、現場の空気や利用者さんごとの細かな事情までは分かりません。
出力された文章や項目は、そのまま使わずに、最後は必ず人の目で確認することが大切です。
AIは教育の代わりではなく、整理の補助として使う
新人教育で大切なのは、実際の現場で先輩と一緒に確認しながら、少しずつ覚えていくことだと思います。
AIは、その関わりを置き換えるものではありません。
- テンプレを整える
- コメントの下書きを作る
- 面談内容を整理する
- 表現をやわらかくする
- 施設向けのたたき台を作る
このくらいの使い方が、現場ではちょうどよいと思います。
11.このテンプレートを使ってみて、「うち向けに整えたい」と思った方へ
今回のテンプレートは、そのままでも使いやすいように作っていますが、実際には施設ごとに流れやルールが違うので、このままだと少し合わないこともあると思います。
たとえば、
- 特養向けに項目をもう少し生活支援寄りにしたい
- 老健向けにリハビリ連携や在宅復帰の視点を足したい
- デイ向けに送迎やレクの流れをもっと強めたい
- 自施設の記録ルールに合わせて文言を変えたい
- ロゴ入りにしたい
- 色や見た目を整えたい
- 自動集計や進捗の見える化をもう少し強くしたい
- 独自のシートを追加したい
- 使わない部分を整理して、もっとシンプルにしたい
といったことは、どうしても出てきます。
今回のテンプレートは、かなり厚めに入れています。
それは、いろいろな施設で使える入口にしたかったからです。
でも実際に使うときは、必要なものを選んで、残りは消したり非表示にしたりしながら、自施設向けに整えていくのがいちばん自然だと思います。
そういう方に向けて、今後は施設向けのExcelツールの個別カスタマイズも受けていく予定です。
まずは今回の無料版を使ってみて、「ここをこうできたらもっと使いやすいのに」と感じたときに、相談先のひとつとして思い出してもらえたら嬉しいです。
気になる方はお気軽にお問い合わせや各SNSからもご連絡いただけましたら対応させていただきます。
12.まとめ
介護の新人教育・新人研修では、教える側にも、新人さん本人にも、見通しが持てる形があることが大切だと思います。
介護現場は、一日一日まったく同じようには進みません。
だからこそ新人さんは、手順だけでなく、いざというときにどう動けばよいのかが分からず迷いやすいです。
しかも指導する職員が日によって変わると、自分ではできているつもりでも、まだ教わっていない視点が残っていることもあります。
そうしたズレや不安を減らすためにも、チェックシートで
- どこまでできるのか
- どこにまだ不安があるのか
- 何を次に確認したいのか
を見える形にしておくことが大切だと感じています。
今回のテンプレートは、
「まず使える」だけでなく、
「続けやすい」
「共有しやすい」
「振り返りやすい」
ということも意識して、できるだけ実務で使いやすい形にまとめました。
そして内容は少し厚めに入れています。
だからこそ、すべてを一度に使おうとするよりも、必要なものを選びながら、それぞれの施設に合う形に整えて使っていただけたらと思います。
新人教育は、忙しい現場の中で進めていくからこそ大変です。
だからこそ、完璧を目指しすぎず、少しでも分かりやすく、少しでも続けやすい形に整えていけるとよいのだと思います。
今回の無料テンプレートが、これから新人さんを迎える準備や、日々の教育の整理に少しでも役立てば嬉しいです。
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