介護現場の外国人介護士と日本語の問題|記録トラブルと言葉の壁をケアテックで減らす

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こんにちは!
元ITエンジニアで現役介護福祉士の僕やなぎです。

ここ数年、日本の介護現場には、特定技能や技能実習、EPA(経済連携協定)など、いろいろなルートで外国人介護士さんが増えてきました。

「人手が足りない中で、本当に助かっている」という声もあれば、
「日本語や文化の違いに戸惑うことも多い」という声も、現場ではよく聞きます。

その中でも、僕がいちばん強く感じているのが「日本語」と「記録」の問題です。

この記事では、

  • データから見た「外国人介護士のいま」
  • 言葉の壁が、記録やチームワークにどう影響しているか
  • それを少しでも支えるためのケアテック(ICTツール)の例
  • そして、僕自身が用意している「介護日本語アプリ」が、どんな位置づけで役に立てそうか

を、ゆっくり一緒に整理していきたいと思います。

最後に、この記事で触れている日本語学習アプリについても、
「詳しく知りたい人だけ開いて読める」よう、開閉ボックスで紹介しておきますね。


目次

1.日本の介護現場と外国人介護士のいま|日本語の課題が見え始めた背景

まずは、「今、日本の介護現場にはどのくらい外国人介護士さんがいるのか」という全体像から見てみます。

1-1.外国人介護士はどのくらいいる?介護現場の受け入れルートと人数

厚生労働省の資料をもとにした整理では、介護分野で働く外国人介護人材は、主に次の4つのルートから来ています。

  • EPA(介護福祉士候補・有資格者)
  • 在留資格「介護」
  • 技能実習(介護)
  • 特定技能1号(介護分野)

それぞれの在留者数と、おおまかな割合をまとめると、次のようになります。

表1:外国人介護人材の受け入れルート別人数(概算)

受け入れルート人数(人)時点全体に占める割合(概算)
EPA 介護福祉士候補・有資格者3,2522025年3月1日時点約4.4%
在留資格「介護」10,4682024年6月末時点約14.1%
技能実習(介護)15,9092023年12月末時点約21.5%
特定技能1号(介護分野)44,3672024年12月末時点約60.0%
合計(概算)73,996約100%
※人数は各制度ごとに公表時点が異なるため、「現時点での概算」として扱っています。
出典: 医療介護求人サイト「ミカル」『介護現場で外国人が働く仕組みとは?メリット・問題点を紹介』
(厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」のデータをもとに再構成)

外国人介護人材は、いまや「日本の介護を一緒に支えてくれている大事な仲間」と言って良いくらいの規模になっています。

1-2.介護現場で進む「多国籍チーム」化|国籍や背景の違いと向き合う

さらに、「どの国の人たちが来てくれているのか」をイメージしやすくするために、ここでは、特定技能1号【全分野】における国籍別の内訳も紹介しておきます。
※介護分野だけではなく、建設や外食なども含めた “特定技能1号 全体” のデータです。

表2:特定技能1号(全分野)の国籍別構成(トップ5)

国籍・地域人数(人)全体に占める割合備考
ベトナム146,270約43.9%最も多い
インドネシア69,384約20.8%2番目に多い
ミャンマー35,557約10.7%
フィリピン32,396約9.7%
中国19,901約6.0%
対象:特定技能1号在留外国人(全分野合計)/2025年6月末時点(速報値)
出典: 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等(特定技能制度運用状況 令和7年6月末)」
参考: 特定技能online「特定技能1号 在留外国人数(2025年6月末時点)」

介護に限っても、ベトナム・インドネシア・ミャンマー・フィリピン・ネパール・中国…と、さまざまな国からスタッフが来ています。

実際、僕が以前勤めていた特養でも、外国人スタッフが全体の4割ほど在籍していました。
国籍もベトナム、フィリピン、インドネシア、ネパール…と本当に多種多様で、「多文化チーム」という言葉がぴったりの現場でした。

毎日のケアの中で、いろんな国の言葉や文化に触れられるのは、とても楽しくて学びの多い時間でした。
一方で、どうしても避けて通れなかったのが「日本語」と「記録」の問題です。


2.介護現場の「外国人×日本語」問題と記録の負担

2-1.データで見る「外国人介護士の日本語コミュニケーションの困りごと」

外国人介護人材の受け入れに関する調査を見ていくと、「日本語まわり」が大きな課題として何度も挙げられています。

たとえば、特定技能として働く外国人介護士136人へのアンケートでは、「介護の仕事をしていて困ったこと」の上位2つが、日本語に関する項目でした。

表3:外国人介護士が現場で困っていること(日本語・記録まわり)

困りごとの内容回答割合
日本語でのコミュニケーション45.6%
日本語での記録41.2%
腰痛など身体面の負担36.8%
対象:特定技能として働く外国人介護士 136人/質問:「介護の仕事をしていて困ったことはありますか?(複数回答)」
出典: 株式会社ニッソーネット「特定技能として働く外国人介護士へのアンケート調査」

2-2.日本語での記録が生む「見えにくい負担」とチームの歪み

この数字を見たとき、僕は「やっぱりそうだよなあ…」と、少し胸がきゅっとなりました。
というのも、僕が以前勤めていた現場でも、いちばん悩ましかったのが、まさに「日本語での記録」だったからです。

その事業所では、先ほど書いた通り、職員の約4割が外国人スタッフでした。
国籍も多種多様で、母国語もバラバラ。日本語を教えたくても、それぞれの母語に合わせて丁寧に伝えるのは、どうしても限界があります。

なかでも難しかったのが「毎日書く記録」です。

  • 日々の経過記録や申し送りは、日本語で書く必要がある
  • 家族が目にする可能性もあるので、誤字や意味の取り違えはできるだけ避けたい
  • 医療・介護の専門用語も多く、一つの言い回しの違いでニュアンスが変わってしまう

外国人スタッフの中には、本当に一生懸命に記録を書いてくれる方がたくさんいました。
ただ、日本語としてはどうしても「片言」になってしまったり、意味が違って伝わってしまいそうな表現になることもあります。

そうなると結局、❝外国人スタッフが頑張って書いてくれた記録を日本人スタッフが後からまとめて修正する❞という流れが、ほぼ毎日のように発生していました。

もちろん、これは「誰かが悪い」という話ではありません。
みんな、自分の持ち場で一生懸命やっているだけです。

それでも、現場の空気としては、

誰も悪くないのに、誰かだけが疲れてしまう空気が少しずつ積もっていきました。

外国人スタッフは
「自分もちゃんと記録に参加したいのに、日本語に自信がない」。

日本人スタッフは
「もっと一緒にやりたいのに、最後の修正だけ自分に集中してしまう」。

そんな“ちょっとした歪み”みたいなものが、知らないあいだに積み重なっていく感覚があったんです。

だから僕は、「日本語の問題」は単なる言語の壁ではなくて、
チームのバランスや、誰かだけが消耗してしまう構造にもつながる、とても大きなテーマ」だと感じています。


3.ケアテックで支える外国人介護士の日本語コミュニケーションと記録

では、この「言葉の壁」や「記録の負担」に対して、どんなケアテック(ICTツール)が活用されはじめているのでしょうか。

ここでは、「日本語コミュニケーション・記録支援」という観点から、代表的な事例を2つだけ取り上げて、イメージが湧きやすい形に整理してみます。

表4:ケアテック(ICTツール)の活用と日本語・記録まわりの効果

ツールの種類・事例主な機能・特徴確認できる効果・ポイント
生成AI要約ツール(NTT東日本「tsuzumi」介護記録の文章作成をAIが支援し、下書き生成や要約を自動化するツール。新潟県上越市の実証で、記録時間が1日39分→17分(約56%削減)となり、職員の負担軽減と対人ケア時間の確保につながったと報告されている。
多言語対応介護記録アプリ「みんなのKAIGO多言語表示や音声入力、自動翻訳、介護記録文例集などを備え、日本語に不安がある職員でも入力しやすいよう設計された介護記録アプリ。定量データは未公表だが、海外人材にとって日本語での記録業務が大きな不安であるという問題意識から開発され、日本語記録への心理的ハードルを下げ、記録参加のしやすさを高めることを目的としている。
出典:
・生成AI「tsuzumi」の事例: 「上越市の介護現場で生成AI『tsuzumi』を活用 記録業務の56%効率化に成功、人手不足が深刻な介護業界での挑戦」
・多言語対応アプリ「みんなのKAIGO」: 一般社団法人アジア国際交流支援機構「日本初!海外人材受け入れの介護教育現場から生まれたユニバーサルデザイン介護記録アプリ『みんなのKAIGO』」プレスリリース

3-1.生成AIで介護記録の日本語負担を軽くする取り組み

ひとつめは、生成AIを使って記録業務を支える取り組みです。

たとえば、NTT東日本の「tsuzumi」を活用した新潟県上越市の実証では、

❝記録の下書き生成や要約をAIが支援することで、1日あたりの記録時間が、39分 → 17分(約56%削減)❞

という結果が報告されています。

これは、単に「時間が短くなった」だけでなく、
「職員が記録に追われる気持ちを軽くし、そのぶん対人ケアに時間と意識を向けられるようにする」取り組みとも言えます。

3-2.多言語対応の介護記録アプリで「日本語の壁」を下げる

もうひとつは、多言語表示や文例集などを備えた介護記録アプリです。

たとえば、「みんなのKAIGO」のようなツールは、

  • 多言語表示
  • 音声入力
  • 自動翻訳
  • 介護記録の文例集

といった機能を備え、日本語に不安がある職員でも入力しやすいように設計されています。

定量的な効果データはまだ多くありませんが、開発の背景には、

「海外人材にとって、日本語での記録業務が大きな不安である」

という強い問題意識があります。

こうしたツールは、

  • 日本語での記録に対する心理的ハードルを下げる
  • 外国人スタッフも「記録づくりの一員」として関わりやすくなる

といった点で、現場の空気を少しずつ変えるきっかけにもなり得ると感じています。

もちろん、どのツールも万能ではありませんし、導入できるかどうかは施設の規模や予算にも左右されます。
それでも、「言葉の壁」を一人ひとりの根性だけに任せるのではなく、

「道具の力も少し借りながら、一緒に乗り越えていく」

という考え方は、これからもっと大事になっていくと思います。


4.外国人介護士向け「介護日本語アプリ」という小さな解決策

ここまで見てきたように、
外国人介護士さんにとって「日本語での記録」は、とても大きなハードルになりやすい一方で、
日本人スタッフ側も「最後の修正だけ自分に集中してしまう」という負担を抱えがちです。

誰もサボっていないのに、
誰も悪くないのに、
気がつくと「記録まわり」でだけ、誰かが余計に疲れてしまっている。

そんな状況を少しでもやわらげたいと思い、
僕自身も「現場で使える、小さな日本語サポートツール」を用意しました。

それが、外国人介護士さん向けの「介護日本語アプリ」です。

このアプリは、立派な“主役”というよりも、

❝言葉の壁に向き合うためのいくつかある解決策のうちの、ささやかな一つ❞

ぐらいの位置づけで考えています。

介護現場でよく使う日本語・専門用語をその場で確認できたり、使い方の例を学習したり、「ゼロから全部、日本語で完璧に書かないといけない」というプレッシャーを、少しでも軽くできたらいいなと思っています。

このアプリは、Opal というサービス上で動くWebアプリとして公開していて、
パソコンやスマホから、次のボタンをタップするだけで開けます。

▼出力結果がこちら⇩

「まずはどんなアプリなのか、内容と使い方を知りたい」という方のために、詳しい説明は、下の開閉ボックスにまとめておきます。
気になる方だけ、クリックして開いてみてくださいね。

外国人介護士さん向け「介護日本語アプリ」の詳しい内容・使い方はこちら

外国人介護士さん向け介護日本語アプリ
(介護現場でよく使う日本語を学べる&AIで記録文を整えるサポートツール)

■ こんな方に向けた“小さなツール”です

・外国人介護士さんと一緒に働いていて、「日本語での記録」がいつも大きな負担になっている
・専門用語やよく出てくる表現を、その場ですぐ確認できるようにしたい
・いきなり完璧な日本語で書いてもらうのではなく、「メモ → 整え → 最終チェック」という流れを作りたい

■ できることのイメージ

・介護現場でよく使う日本語・専門用語のミニ辞書
 例)転倒/誤嚥/インスリン/嚥下状態/ADL など
 むずかしい漢字や言い回しも、「やさしい日本語」で補足しています。

■ 現場での使い方イメージ

1.外国人スタッフさんが、今日の出来事をメモ(母語+日本語のミックスでもOK)で残す
2.アプリ内で、日本語の専門用語や言い回しを確認する
3.日本語と指定した言語の両方で専門用語についての解説が表示され、わかりづらい部分まで学習できる。

こうすることで、

・外国人スタッフさんも「記録づくりのメンバー」として関わりやすくなる
・日本人スタッフは、「ゼロから文章を全部書く」負担を少し減らせる

そんな状態に近づけることを目指しています。

■ 操作イメージ(例)

▼トップ画面でできること


▼知りたい日本語用語の専門用語を入力して➡を押下(例:臥床、褥瘡、移乗など)

▼翻訳してほしい言語を入力して➡を押下(例:ベトナム語、英語など)

▼出力結果がこちら⇩

■ アプリのURL(Opal)

アプリは、次のリンクからも開けます。


5.まとめ:介護と外国人と日本語の問題を、データと現場とケアテックで考える

ここまで、

  • データから見た外国人介護士の受け入れ状況(ルート別・国籍別)
  • 現場で大きな壁になっている「日本語でのコミュニケーション」と「日本語での記録」
  • それを支えるケアテックの事例(生成AIや多言語記録アプリ)
  • そして、その一端を担うための、僕が用意している「介護日本語アプリ」

という流れでお話ししてきました。

統計やアンケートを見ていると、「外国人介護人材が○万人」「○%が日本語で困っている」といった“数字の世界”が見えてきます。
一方で、現場で僕たちが向き合っているのは、

  • 「今日の出来事を、日本語でどう書けばいいか分からない」
  • 「この専門用語、利用者さんやご家族にどう説明すればいいんだろう」
  • 「頑張っているスタッフほど、記録の修正で残業になってしまう」

といった、とても具体的で生活に近い悩みです。

僕は、そのどちらも大切にしたいと思っています。

  • 数字やデータから「大きな流れ」をつかみつつ
  • 一人ひとりの現場の声や、“ちいさなもやもや”にも耳を傾けること
  • そして、それを少しでも軽くするための道具や仕組みを、一緒に探していくこと

この記事と、ここで紹介したアプリが、
外国人介護士さん、日本人スタッフ、そして利用者さん・ご家族のあいだに、
少しでも「そよ風」のようなゆとりを届けるきっかけになればうれしいです。

「うちの現場では、こんな工夫をしているよ」
「ここが一番しんどいんだよね」

そんな声があれば、またぜひ教えてください。
そうした現場の智慧も大切に拾いながら、これからの記事づくりやツールづくりにつなげていきたいと思います。

あわせて読みたい:外国人介護士さんとの「言葉」と「記録」を支える関連記事

外国人介護士さんとの日本語や記録のことを、もう少し深く知りたい方に向けて、関連する記事も置いておきますね。

● 介護現場でよく使う日本語・専門用語を整理した記事
「この言葉、日本語でどう説明すればいいんだろう?」というときに役立つ、日本語・専門用語の基礎をまとめたガイドです。外国人スタッフさんに日本語を教えるときの参考にもなります。

● 介護士さんへの「感謝の言葉」や声かけの例をまとめた記事
「いつもありがとう」「助かっているよ」と伝えたいけれど、どんな言葉にすればいいか迷う…。そんなときに使える、介護士さんへの感謝のフレーズやメッセージ例を紹介しています。

● SOAP形式での介護記録の書き方・例文をまとめた記事
「日本語での記録」が負担になっているときに、記録そのものの組み立て方を見直すための記事です。SOAP形式の考え方や、実際の書き方・例文を丁寧に解説しています。

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